105*野佐怜奈『don’t kiss , but yes』制作ノート#04
03.ハートのシグナル
「曲の構成」というものがある。 オーソドックスなものとしては、例えば、 ●イントロー1番ー中イントロー2番ー間奏ーサビーエンディング (中イントロはインタールードとも呼ばれるが、僕は「中トロ」とも言う) ツーハーフと呼ばれる構成だ。2コーラスと間奏後に、またサビだけという。 レイナちゃんの台本によると、この曲は”片思い。爽やか青春ソング” これを読んだ時点では、まだ頭の中で何も鳴ってくれずアレンジは白紙。 だが、細部はともかく、全体の構成、歌の構成だけは早く決めないといけない。 作詞家に発注する歌詞の分量にも関わってくるからだ。 とりあえずオーソドックスなツーハーフのサイズで、 サニーデイ・サービスの田中くんに歌詞をお願いした。 僕は歌中で転調する曲が好きで、よくそういう曲を作るのだが、 この曲はめずらしく転調せず、最初から最後まで同じキーだ。 ならばと・・構成自体がオーソドックスなので、間奏やエンディングで転調してみた。 曲自体が、テンポも含めスイスイと流れていく曲なので、 転調で、全体にアクセントというかメリハリをつけようと思ったのだ。 そうこうしてヘッド・アレンジを進めるうちに、 田中くんの歌詞があがってきた。タイトルは「ハートのシグナル」 2番のBメロの最後 ”シグナルが すっと消え色を変えた” から、 転調して間奏のギター・ソロへ突入する瞬間は、 田中くんと僕のあ・う・ん・の呼吸ですね。ガラッとムードも変わって。思わずニヤっとしました(笑) そのギター・ソロを弾いているのは、なんがさきふぁいぶやplaytime rock でもプレイしてもらっている長崎の尾口陽軌(たかのり)くん。 彼はロック、ポップス、フュージョン、ジャズ、何でもござれの、 変態プレイヤーだ(笑)、 今回は僕の頭の中に、何故か映画「真夏の夜のジャズ」で、サックスのソニー・ステットと共演したサル・サルヴァドールのスイスイしたプレイのイメージが浮かび、ジャズ・テイストのソロを弾いてもらった。 (サル・サルヴァドールのギター・プレイはこの動画の14:42あたりから) ベースも長崎組で、なんがさきふぁいぶやplaytime rockでプレイしてもらっている、田川遊人くん。彼も尾口くん同様、曲の読解力に優れ、その軽やかなフレージングは無尽蔵だ。 こうしてギターとベースを録音した時点で、僕は東京へ飛び、レイナちゃんの歌をレコーディングした。彼女の声はいわゆるダブルで歌っても、とてもいいかんじの効果が出たので、この曲のサビはダブルで録った。自分で作っておきながらなんだが、この曲は実際歌ってみるととても難しい。ちなみに僕は歌えなかった(笑)音程の起伏が激しい器楽的なメロディで、しかも譜割りが細かく、テンポも早い。歌い手にとってはニュアンスがつけにくいのだ。それでも彼女は見事に歌いこなした上で、隠し味的な微妙なニュアンスを加味し、繊細な乙女心を表現してくれた。 。 (歌詞カードに何やらメモをとるレイナちゃん。漫画を描いてるだけかもしれない。) さらに3声ダブル、計6人分のコーラスをひとりでやってくれた。 このコーラスはスタジオでその場で考え、そのフレーズをひとつひとつレイナちゃんに教え、1声ずつ録音した。ちょうどその時、作詞の田中くんが陣中見舞いにスタジオに遊びにきてくれたのだが、1声1声のコードとの整合性等を確かめながらの作業が、とてもデリケートで集中を要するため、ゆっくりお話しもできず、田中くん、失礼しました! で、音楽ライターのウチタカヒデさんがtwitterで、この曲のコーラスが松本伊代の「センチメンタルジャーニー」してると呟いておられたので、確認してみたら然り。 とくに意識はしてなかったが、歌謡曲っぽいコーラスにはしたかったので・・でも実はスタカンなんです(笑)ま、王道のコーラス・パターンとも言えるだろう。コーラスの言葉がまた微妙で、”シュビドゥワ”だとオールディーズっぽすぎるなーとか、いろいろ悩んだあげく、間奏やエンディングのコーラスの言葉は、スタイル・カウンシルの「ロング・ホット・サマー」のコーラスの言葉を引用した。”シュドゥドゥワ”だ。ほんとに微妙な違いなんだけど(笑) そして僕は出来上がった歌とコーラスのデータを持って長崎へ戻り、オケのデータとともに東京のアレンジャー松井くんに送って仕上げを任せ、また別の曲のヘッドアレンジに取りかかった。今回のレコーディングはこの行程の繰り返しだった。 数日後、松井くんから電話があり、アレンジの途中経過が送られてきた。 「方向性が違ってたら、傷が深くなる前に言ってください」と。 で、プレイバック。いきなりシタール的音色。何かが始まる予感のする分数コードに、謎のカレー風味というかインド風の旋律。「こうきたかぁ・・・?」 何度も聴いているうち、このわけのわからなさに60年代のロマンチクック・コメディ的な匂いをかんじるようになってきた。僕が大学生のころ、東京12チャンネルでや観てた「2時のロードショー」。ビリー・ワイルダーやリチャード・クワインやスタンリー・ドーネンやブレイク・エドワーズ等が監督した、ヘプバーンのロマンチクック・コメディものは、たいていこの番組で知ったような記憶がある。およそ80分というズタズタにカットされたものだったが。 (しかしこの映画「パリの恋人」は、まさに目から鱗!何十回観たことか。ヘプバーンはもちろん、フレット・アステアのファッションも素敵でした。) この歌詞に込められた期待と不安と恐れが入り交じった可愛い期待感と、インド風イントロの荒唐無稽なわけのわからなさが、どうにもロマンチック・コメディ的なのだ、僕には。僕は携帯を手にとり、「松井君、面白い!!(笑)採用いたします」と告げた。もしこの曲でPV撮るなら、オープニングはパリにあるインド料理屋がいいな・・・ ところで、作詞の田中貴くんはベーシストでもあり「ラーメン評論家」でもある。 スタッフ曰く、この素敵な歌詞の「あなた」という言葉を全部「ラーメン」に置き換えると、そっくりそのまま、彼のラーメンへの愛情表現になるんだとか・・そんな隠し味が仕込まれていたとは・・この曲、副題は「ラーメンLOVE」です(笑)
by playtime-rock
| 2012-10-27 01:29
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