2011年 12月 26日 ( 1 )

074*『ナガサキ洋楽事始め』制作ノート#03*グレゴリオ聖歌の入門編

アルバム『ナガサキ洋楽事始め』の2曲目に「来たり給え、創造主たる聖霊よ」、
5曲目に「谷川の水を求める鹿のように」という曲が収録されている。
前々回言及した混声合唱団、ムジカ・アンティカさんの歌唱によるものだ。

この2曲を含む19曲のグレゴリオ聖歌の楽譜が、
1605年に長崎のコレジョ(大神学校)で印刷された、
ラテン語による『サカラメンタ提要』という典礼書に掲載されている。
19曲のグレゴリオ聖歌の多くは、葬儀のための曲だ。
というのも、日本が葬儀を重んじることから、日本用に編集されたという。
それらは五本の譜線が朱色で、特殊な四角い形をした音符は黒色で印刷された、
とてもきれいな二色刷りの楽譜印刷である。
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<http://www.yushodo.co.jp/press/christian/index.html>

この『サカラメンタ提要』は、九州のキリシタン大名の名代とし、
てローマへ派遣された伊東マンショら天正遣欧少年使節団が持ち帰ったといわれる、
グーテンベルグ印刷機によって印刷された。
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<グーテンベルグ印刷機:http://www.hyoinko.or.jp/mukashi2/material/art/p1.html>
キリスト教弾圧でいったん国内から姿を消したが、
20世紀になって再び日本に戻った。世界に現存するのは8冊と伝えられ
、国内では現在、上智大学などが計2冊を収蔵している。

専門的になるとどうも筆が進まないので、
僕なりにグレゴリオ聖歌の変遷をおおまかに見ると、

・4世紀ころまでの教会音楽は単純で、一般の信者にも歌えた。

・6世紀終わり、ローマ教皇に就任したグレゴリウス1世による、
典礼の整備や教会改革により、神を讃える聖歌はより高度に複雑に、
芸術性の高いものとなった。しかも死語に近い古いラテン語で歌われたので、
一般の信者には歌えないものに。

・よって卒業するまでに9年もかかる音楽学校(スコラ・カントルム)ができ、
聖歌を歌えるのは、そこで学び訓練を受けた人々、聖歌隊に限られた。

・その後ローマ・カトリックの勢力が増し、各地方の聖歌をローマ式に統一
しようということになるが、
8世紀終わり頃フランク領ガリア(今のフランスにあたる地域)の聖歌に、
ローマ式が介入し、新しいローマ・フランク聖歌=グレゴリオ聖歌が誕生する。
グレゴリウス1世在位から、実に200年あまり後のことだ。

一般にグレゴリオ聖歌は、単旋律(モノフォニー)無伴奏を特色としているが、
この頃には、トロープ(典礼で正式に用いられる歌詞に、
更に詳しい説明的な言葉を挿入したもの)や多声化(ポリフォニー)
という変化が見られる。

『ナガサキ洋楽事始め』でムジカ・アンティカさんが歌ってくれた2曲は、
1曲は単旋律(モノフォニー)で、もう1曲が多声(ポリフォニー)である。
単旋律(モノフォニー)の「来たり給え、創造主たる聖霊よ」は、
一般信者にも歌われたものともいう。当時の長崎の信者も歌っていたことだろう。
僕にとっても、まさにグレゴリオ聖歌の入門編みたいなものだ。
その2曲ともが、今年5月に行なわれた”東日本大震災チャリティー・アクト”での、
ライブ音源である。
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通常ライブ音源は、あとになって冷静に聴くと、
いろいろと荒が目立ち、必ずしもベスト・テイクとはいかない。
ま、それがライヴなのだが・・・
マルチ・レコーディングであれば、あとである程度の修正はきく。
それこそ、歌を歌いなおしたりできるわけだ。
現在、世に出ているライブ音源も、そういうものが多いと思う。

今回はマルチ・レコーディングではなかったため、修正はできない。
ムジカ・アンティカさんも、スタジオでの再録音も考えられたらしい。
が、あの日あの時、同志や聴衆がが集った緊張感のある会場で、
被災地に向けた、みんなの思いをのせた歌声は、
とてもスタジオで再現できるものではない。
僕もムジカ・アンティカさんとまったく同じ思いでした。
ありがとうございます!

さて、そのムジカ・アンティカさんのメンバーも参加される、
音楽イベントの告知です。
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12月27日(火)、活水学院 大チャペルに於いて、
『長崎メサイアシングアロング』が開催されます。
http://www.nmessiah.net/
舞台と客席が一体化する参加型音楽プログラムです。
ヘンデルの「メサイア」等を楽しくシング・アロングするそうです。
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当日の受付は、14:30から。15:00から発声練習で、15:30から本番です。
ご興味のある方は、ぜひ参加されてください。
問い合せは 山口義人 095-822-9585
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by playtime-rock | 2011-12-26 13:12