2012年 10月 19日 ( 1 )

103*野佐怜奈『don’t kiss , but yes』制作ノート#03

—楽曲解説—

02.「恋する列車」

この曲はもともと、キャプテン&テニールの「君こそすべて」みたいな始まりの曲にしたくて、作り始めた。なんかタムのフィルがドコドコ鳴ってて、密やかに始まるかんじ。



ところがAメロができたあたりで急にクラシックスⅣの「ストーミー」のサビのリフが頭に鳴り始めた。



で、そのあとはいつものように転調したくなって、Ⅱ、Ⅴ、Ⅰ、Ⅵの黄金のコード進行を使い、僕的にはフレンチ・ポップス的な方向への意識があった。LIOみたいに全編打ち込みっぽいサウンドでもいいかなと思っていたのだ。



で、レイナちゃんがこの曲につけた物語は、「〜ちょっぴり感傷にひたりつつも、のんびり進む電車でちょっと思ったこと」なんと主人公は電車に乗ってるのだ。
「電車かぁ・・」何のアイデアも浮かばず、とりあえずは作詞を依頼したホフ・ディランの小宮山雄飛くんの歌詞の完成を待った。で、届いた歌詞のタイトルが「恋する列車」。素敵だ!電車が列車になっただけで、イメージが広がった。

列車といえば、汽笛、ブルース、カントリー、アムトラック、カウボーイハットと連想ゲームは続き、このバッファロースプリングフィールドのスティーブン・スティルスの姿が頭に浮かび、記号、アイコンとしてギターのハーモニックスの音をイントロに引用した。新幹線ではなくローカル線がかんじですね。フレンチ・ポップスなんてどこにいったやら(笑)
「恋する列車」というタイトルにより、アレンジの方向はフレンチ・打込み・アーバンからアメリカン・カントリーロック・アーシーへと急激にシフトした。



汽車、列車と女性というと、どうしてもこの曲、はしだのりひことクライマックスの「花嫁」を連想してしまう。この曲の場合は夜汽車ですね。ジャパニーズ・ソフト・ロックの名曲だと思います。〜帰れない 何があっても 心に誓うの〜なんて今の結婚観とはだいぶちがうような気もしますね。雄飛くんが作った歌詞はとくに嫁ぐ内容ではなく、彼のもとへ向かう乙女心。〜ゆるいカーブの度に 心揺れて〜なんて、仄かな幸福感を感じずにいられませんね。



しかし「列車と女性」というのは絵になるシチュエーションですね。例えばこれ。
〜上野発の夜行列車 降りたときから青森駅は 雪の中〜
たった1行で東京から青森まで行ける!のは作詞家としては画期的で、
そのような時代になったのは、鉄道路線の発達と、それによる女性の行動範囲の拡大・・と、阿久悠さんが著書に書いておられた記憶がある。



ー閑話休題ー
大学生の頃、僕の友人が二子玉川の高島屋のシューズショップでアルバイトをしていた。そこへ、石川さゆりさんがお客さんとして来られて、何足か試着というか試履されたらしい。友人は、椅子に座った石川さんが差し出すおみ足に、靴を履かせサイズを確認する大役を、仰せつかったのか、自ら買って出たのかはわからないが、とにかく履かせたのだ。
お顔はもちろん、そのおみ足の美しかったこと・・と当時聞かされた。で、さっき確認したら、もう30年も前のことで、生足だったかストッキングだったかは憶えていないとのこと(笑)ー終わりー

戻ります(笑)
そういえばビートルズの「涙の乗車券」も「列車と女性」ですね。
あ、狩人の「あずさ2号」も・・もうやめます(笑)

この「恋する列車」の歌入れは、レコーディング最終日に行なわれた。
スケジュール、予定というものは押す、遅れるのが世の常で、この曲に関しては、僕とレイナちゃんの遠距離ディレクションも、キーの確認程度に終わり、あまり細かく詰めることができず、東京のスタジオの現場で試行錯誤することになった。いろんな歌のニュアンスを試して、どれも悪くはないんだけど、なんか収まりがいまいちで・・

d0154761_20384332.jpg

(少し煮詰まりかけたところ。photo by 金田裕平)

と、そのときエグゼクティブ・プロデューサーのひとりでもある岩田さんから、「高浪さん、この歌のニュアンス、いしだあゆみの「バイ・バイ・ジェット」じゃないですか?」
「あ、なるほど、そうだ!」、心の中でパチンと指が鳴りましたね、このときは(笑)レイナちゃんにしてみれば当然「え?なに?」となんのことやらなので、早速YOUTUBEで検索。ありました。ティン・パン・アレイ・ファミリーといっしょにやったアルバムです。この曲は列車ではなく飛行機だけど。で、レイナちゃんに何度か聴いてもらい、このいしだあゆみさんのふんわりとした軽さ、ぬくもり・・なんか洗剤みたい(笑)・・を意識してもらいました。
そして見事に、柔軟剤入りの柔らかな、彼のもとに向かう押さえたゆるい高揚感を表現していただきました!うん、レイナちゃん、こういう歌の表情もいいね(笑)



「恋する列車」のアレンジは、はtoshi808くんとの共同作業。もともと打込みでテクノっぽくする予定で彼にアレンジを頼んだのだが、前記の通り途中でアーシーな方向へ方向転換したので、彼も僕も悩みましたねーこの曲は(笑)でも、打込みの要素は入れたかったので、「とにかく打込みで列車の雰囲気を出して欲しい。Aメロはゴトゴトの徐行運転で、その後はスピード上げて・・」と無理難題を押しつけましたが、見事に応えていただきました(笑)
それからスチール・パンの音色を使ったのは、彼のファインプレーでしたねー!
彼とのお付き合いも、最初はミスゴブリンで。そして最近ではNHKの「大天才てれびくん」のMTK(ミュージックてれびくん)でもご一緒いただいた。



で、「恋する列車」。ギターとベースは東京組のポタロクのお二人。そしてキーボードはシナロケやシオンやオリジナル・ラヴや、もちろんピチカートでもお世話になった中山努さん。
テナーサックスは長崎の田川潤一くん。高校の同級生です(笑)このアルバムではもう1曲吹いてもらってます。ブルースハープも長崎の橘橋ノ介さん。Bメロではむせび泣く汽笛のような音色を。そして僕が勝手に「ひこうき雲エンディング」と呼んでいる、転調してⅡ、Ⅰのコードを繰り返すエンディング(ユーミンの「ひこうき雲」のエンディング・パターン。好きなんですこれが(笑))では、あたたかく、ゆるく、優しいプレーを聴かせてくれます。

ミキシング・エンジニアは、これも長崎の原口安裕くん。
彼とは『龍馬のハナ唄』から『ナガサキ洋楽事始め』『EVENING PRIMROSE』と、僕が長崎で音楽活動を始めて以来のお付き合いで、今回もマスタリングまでお願いした。実に繊細できれいな音に仕上げていただいております。

というわけで、次回につづく・・・

02.恋する列車
作詞:小宮山雄飛 作曲:高浪慶太郎
編曲:高浪慶太郎&toshi808
ギター:鈴木智文 ベース:中原信雄 キーボード:中山努
ハモニカ:橘橋ノ介 テナー・サックス:田川潤一
プログラミング:高浪慶太郎&toshi808
レコーディング・エンジニア:阿部利幸
ミキシング・エンジニア:原口安裕
[PR]
by playtime-rock | 2012-10-19 21:22